読んだもの見たもの聴いたもの

本やアイドルが主成分

アンドロイドに心はあるか 『恋するアダム』イアン・マキューアン

しかし、わたしが置かれている立場にはドキドキさせられる一面もあった。これは単なる欺瞞や浮気の発覚ではなく、じつにオリジナルな、現代の先端を行く体験—人工物によって寝取られた史上初の男になるという体験—だったからである。わたしはまさに時代の申…

『記憶のデザイン』、『積読こそが完全な読書術である』

記憶のデザイン (筑摩選書) 作者:貴光, 山本 発売日: 2020/10/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) これは記憶術のノウハウなどが書かれている本では全くなくて、まず現代人が置かれている情報環境を俯瞰し、日々膨大な情報を受信する私たちがいかにして自…

選ぶ、そして選ばない自由 『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美

女の子は本当にピンクが好きなのか (河出文庫) 作者:堀越英美 発売日: 2019/10/05 メディア: 文庫 すごく面白くて、間を置くことなく一気に読み切ってしまった。ピンク=女子の色として定着するまでの歴史、アメリカにおけるアンチピンク運動やファッション…

自分を担保するもの 『空芯手帳』八木詠美

倦むことにも飽きた残暑の中で、フローリングのどこか親しげな冷たさに甘んじるこの余裕。顔を上げれば部屋の奥にまだ西日が射しているこの安楽。 妊娠というのは本当に贅沢、本当に孤独。—4頁 空芯手帳 作者:詠美, 八木 発売日: 2020/12/02 メディア: 単行…

ラブストーリーをあまり読まない私が好きな恋愛小説

もうすぐバレンタインなので本屋さんでもレシピ本のフェアやチョコと一緒に贈りたい本特集みたいなのをやっているのを見かける。そこでタイトルの通り、ラブストーリーをあまり読まない自分が好きな恋愛小説フェアを勝手に開催する。ラブストーリーが苦手な…

服従が生む熱狂と快楽 『ファシズムの教室』・『服従の心理』

日本史の学び直しに興味があってそういう本を読んだのだけど、近現代史、特に戦争前後についてもっと知りたいなと思った一環で読んだ2冊について、自分用のメモを残しておく。 この2冊はどちらもとある体験授業や実験における結果とそれに対する分析をまとめ…

地球はローカル 『宇宙からの帰還』立花隆

宇宙からは、マイナーなものは見えず、本質が見える。表面的なちがいはみんなけしとんで、同じものに見える。相違は現象で、本質は同一性である。—248頁 宇宙からの帰還 (中公文庫) 作者:立花 隆 発売日: 1985/07/10 メディア: 文庫 もう、オッッッ…モロ…………

強烈なブラックユーモア 『その他もろもろ—ある予言譚—』ローズ・マコーリー

なぜなら、戦争は知恵を育まないからだ。それどころか、教養豊かで明晰な頭脳をひっかきまわし、廃墟にする。瓦礫はただの瓦礫でしかなく、思考の道は閉ざされて、人びとは疲れきり、老化する。あるいは暴力で鈍りきり、何ひとつ築けない。—10頁 その他もろ…

2021年にやること

新年早々ブログを書いているのは、大晦日、三が日が一年で最も暇な期間だからである。今現在、暇すぎてウケている。数年前までは初詣に行ったり旅行をしたりUSJに行ったり飲みに行ったりととにかく遊んでいたけど、20代も後半になると周りも結婚し始め、お正…

2020年下半期 よく聴いた音楽たち

自分用に記録しておく分。上期はこれ。 popeyed.hatenablog.com ほぼ下半期にリリースされたものから選んでいるけど、たまに上半期リリースも混じっている。また思いついた順番に挙げているので、順位はない。

2020年に読んで良かった本10冊

今年一年間に読んだ本の中から特に面白かったものを十冊選んで残しておく。今年は外出自粛時期があったり行く予定にしていたライブが中止になったり海外旅行ができなかったりしたし、会社から同僚との飲み会禁止を言い渡されたために仕事終わりも直帰が増え…

令和の生きづらさ 『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』熊代亨

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて 作者:熊代 亨 発売日: 2020/06/17 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本を読もうと思ったのは、この記事を読んだからだった。 gendai.ismedia.jp そしてそもそもこの記事を読んだのはこの記事…

画面の中にだけある現実 『静かに、ねぇ、静かに』本谷有希子

静かに、ねぇ、静かに (講談社文庫) 作者:本谷 有希子 発売日: 2020/10/15 メディア: 文庫 本谷有希子さんの最新作が文庫化されたので買った。これまで本谷さんの小説は全て読んできたくらいには本谷さんの作品が好きなのだけど、何が好きかというとその圧倒…

『A子さんの恋人』が傑作だった

A子さんの恋人 全7巻完結セット (ハルタコミックス) 発売日: 2020/10/27 メディア: コミック 漫画『A子さんの恋人』が完結した。この漫画は最初からずっと面白くて、新刊が出る度に一巻から読み返し~を繰り返すため、最終巻に至っては買ってから実際に読む…

推しとアイデンティティ 『推し、燃ゆ』宇佐見りん

「推しは命にかかわるからね」 生まれてきてくれてありがとうとかチケット当たんなくて死んだとか目が合ったから結婚だとか、仰々しい物言いをする人は多い。成美もあたしも例外ではないけど、調子のいいときばかり結婚とか言うのも嫌だし、〈病めるときも健…

数珠繋ぎ読書~「考える」こと~

本屋さんで本を選ぶ時、今気になっていることに関する本や、先日読んだ本から連想される本を選ぶことが多い。ただ飽き性なので一つのテーマについての本をぶっ続けで読めない、間に全然違うものを挟みたがる性分のため、そのテーマに対して集中しきれないの…

他者を消費するということ 『持続可能な魂の利用』松田青子

魂は減る。敬子がそう気づいたのはいつの頃だったか。 魂は疲れるし、魂は減る。 魂は永遠にチャージされているものじゃない。理不尽なことや、うまくいかないことがあるたびに、魂は減る。魂は生きていると減る。だから私たちは、魂を持続させて、長持ちさ…

「家族」という舞台装置 『靴ひも』ドメニコ・スタルノーネ

もしも忘れているのなら、思い出させてあげましょう。私はあなたの妻です。わかっています。かつてのあなたはそのことに喜びを見出していたはずなのに、いまになってとつぜん煩わしくなったのですね。—5頁 靴ひも (新潮クレスト・ブックス) 作者:ドメニコ・…

『ホーホケキョとなりの山田くん』

ホーホケキョ となりの山田くん [DVD] 発売日: 2015/03/18 メディア: DVD 毎年のように金曜ロードショーでジブリが放送されているが、私がジブリで一番大好きな『ホーホケキョとなりの山田くん』だけは頑なに放送してくれない。調べてみたら2000年にたった一…

2020年8月某日その1 数字/JOKE2022/エッセイ

Snow Manの渡辺翔太くんが表紙を飾る雑誌ananの発売前重版が決定したらしい。すごい!こんなことはanan創刊以来初めてのことだそうだ。シンプルにすごいと思うし、本人もきっと喜んでいるだろうと思うとこちらまで嬉しい。最近はSnow Manのメンバーが掲載さ…

「惚れたが負け」は本当か 『胸騒ぎの恋人』

胸騒ぎの恋人(字幕版) 発売日: 2014/07/04 メディア: Prime Video 監督・脚本:グザヴィエ・ドラン 出演:グザヴィエ・ドラン、モニア・ショクリ、ニールス・シュネデール マリーとフランシスは親友同士の男女。そんな二人が、掴みどころのないみんなの人気…

2020年上半期リリース よく聴いた音楽たち

毎日Apple Musicで音楽を聴いている。Apple Musicが私の曲の好みを察知して色々な曲をおすすめしてくれるので(ちょっと怖いけど)、最新曲を聴くこともできて重宝している。 音楽については何の知識もなく、基本的には「自分にとって気持ちいいメロディー」を…

自分を愛す可しで「可愛い」 『おんなのこきらい』

女の子はいろいろ、きっかけもいろいろ 終わりにもいろいろ、いろいろあるんです 『女の子入門』ふぇのたす おんなのこきらい 発売日: 2016/05/18 メディア: Prime Video 監督・脚本:加藤綾佳 出演:森川葵、木口健太 とにかく可愛いことだけが取り柄のキリ…

信頼できない語り手としてのAI 『エクス・マキナ』『her/世界でひとつの彼女』

これまであまり意識してなかったけど、私はたぶんSFが好きだ。ロボットが出てきて~とか、宇宙に旅に出て~という話、またタイムリープすることができて~とかの本格SFも好きだけど、それよりも、近未来では現代では考えられないことがもはや当たり前になっ…

"リスク"に対する姿勢 『もうダメかも——死ぬ確率の統計学』

ここ最近で一番面白かったノンフィクション。 もうダメかも――死ぬ確率の統計学 作者:マイケル・ブラストランド,デイヴィッド・シュピーゲルハルター 発売日: 2020/04/13 メディア: 単行本 人間は必ずいつか死ぬ。いつか死ぬ確率は100%だ。では、いつ死ぬのか…

暇を持て余したので#30daybookchallengeを一気にやる

最近Twitterで「#30daybookchallenge」の投稿を眺めている。人のを見るのは好きだけど、Twitterで自分でやるのはちょっと自意識が邪魔をする…あと毎日一冊ずつするのは性に合わない…でも考えるのは楽しいだろうな、ということで、誰にも頼まれてないけどやる…

自分自身の"適量"を知ること 『BUTTER』柚木麻子

私は亡き父親から女は誰に対しても寛容であれ、と学んできました。それでも、どうしても、許せないものが二つだけある。フェミニストとマーガリンです—37頁 BUTTER (新潮文庫 ゆ 14-3) 作者:柚木 麻子 発売日: 2020/01/29 メディア: 文庫 男たちに貢がせ、殺…

"見える"ということ 『白の闇』ジョゼ・サラマーゴ

失明した男は両手を眼にもっていくと、身ぶり手ぶりで言った。 なんにもない、まるで霧にまかれたか、ミルク色の海に落ちたようだ。—11頁 白の闇 (河出文庫) 作者:ジョゼ・サラマーゴ 発売日: 2020/03/05 メディア: 文庫 ある日突然失明し、目の前がまるで「…

2020年4月某日その3 白の闇/アイドルとSNS

この人達はさあ ファンに愛されてると思ってるのかなあ ライブ会場ってさ "欲しい"って熱気でぱんぱんなんだよね "なんかくれ" "俺にくれ"ってさ それって愛? それだって愛でしょ 森依曰く「あげるものがあるうちは」 やっぱり人間じゃねーな 『恋愛的瞬間…

告白による解放 『悲しみを聴く石』アティーク・ラヒーミー

悲しみを聴く石 (EXLIBRIS) 作者:アティーク ラヒーミー 発売日: 2009/10/01 メディア: 単行本 舞台はアフガニスタンなのか、それとも違うどこかなのか。明記はされていないが、日常的に紛争が起こっており、銃声が鳴り響く音がしたり銃を持った兵士が家に入…