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本やアイドルが主成分

2020年8月某日その1 数字/JOKE2022/エッセイ

 Snow Man渡辺翔太くんが表紙を飾る雑誌ananの発売前重版が決定したらしい。すごい!こんなことはanan創刊以来初めてのことだそうだ。シンプルにすごいと思うし、本人もきっと喜んでいるだろうと思うとこちらまで嬉しい。最近はSnow Manのメンバーが掲載される雑誌が本当に多くて、その多くが発売前にネット予約受付が終了になったりする。仕事中に雑誌掲載の情報が解禁され、退社後にそのことを知ってももう遅い。すでにネット予約は終了している。そのたびに「そんなに人気があるのか…」と改めて驚く。

  雑誌でもCDでもそうだけど、最近は「重版」や「初週売上」や「再生回数」、色々な数字が可視化され、かつオタク同士がその数字を共有している環境にある気がする。「あと○○枚で売上●●万枚達成!」とか、正直今まで考えたこともなかった。そのあまりの熱量の高さに、ジャニオタ歴10年以上にもなるのに少しビビってしまう。だけど本人が満足する枚数を買えばいい、それだけの話なので、それを受けても自分の行動は特段変わらない。

 ただ複数買いをしている人たちを受けて「あのCD(あのグループ)が売れたのは買い支えした人たちがいるからだ」という言説(要約)を見てしまうと、複雑な気持ちになる。それが悪いことでもないし半分は本当のことかもしれないけど、もう半分はそれだけではないのでは?、と言いたくなる気持ち。それは、昔から好きだった人、最近ひょんなことから好きになった人、本人たちのことはあまり知らないけど曲を好きになった人、色んな背景を持った人たちがほくほくとした顔で買った大切な一枚の積み重ねを、ないことにしてほしくない、という気持ちだと思う。それと同時に、日々一つ一つの仕事に真摯に向き合い新しいファンを獲得していくアイドルたちの頑張りも、ないことにしたくないのだ。だから今後も、どんな数字の結果を受けても「へぇ~!」とか「すご~い!」とかだけ言い、その数字についてはさして分析しないオタクでいようと、個人的には思っている。

 

 コロナのため自宅にいる時間が増え、Twitterを見る時間が少し長くなってしまったからか、上記みたいなことを考えてしまっていけない。とりあえずジャン=ガブリエル・ガナシアという人の『虚妄のAI神話 「シンギュラリティ」を葬り去る』を読む。これは昨日見た『JOKE~2022パニック配信!』というドラマが面白かったから読み始めた。

 『JOKE2022』は宮藤官九郎脚本、生田斗真主演のワンシチュエーション劇。不祥事によりレギュラー番組を降板となったお笑い芸人の沢井(生田斗真)が自宅からの生配信中に奇妙な出来事に巻き込まれる、というお話。このお話の肝は何の指示でも聞いてくれる便利なAIロボット「マイルス」と、お笑いに特化していて大喜利のお題を出してくれたりもするAIロボット「JOKE」という二つのAIロボット。ドラマのここが伏線なのでは?とか、これってこういう意味なのでは?とかは、再放送でもう一度よく見てから言いたいのだけど、ざっくり言うと人間が所有して指示を出して使っているつもりでいるAIが、その実は人間を使っている、という話だと思った。人間が作り出したはずのAIが、人間を凌駕するという言説。私個人としては、人間(親)が作ったAI(子)にAIを作る学習をさせればAI(子)が作ったAI(孫)が生まれて、そうして人間を超えていくのでは?などと想像するのだけど、そういったシンギュラリティに対して「AIは人類を超えない」と主張するのがこの本。まだ読み始めて間もないので楽しみ。

 

 並行して朝井リョウの『風と共にゆとりぬ』も読む。読書において気が多く、今はルース・ベネディクトの『レイシズムと本書と上の『虚妄のAI神話』とをとっかえひっかえして読んでいるので、情緒がめちゃくちゃになる。

 私の中で声に出して笑ってしまうエッセイを書く人というと、さくらももこさん、朝井リョウさん、西加奈子さんなのだけど、朝井さんがさくら先生のエッセイが好きと書いていてとても腑に落ちた。二人ともその場の状況をとても冷静に観察していて、それをユーモアで包んで描写しつつ中に毒を忍ばせている。さくら先生の方がその毒が強く、かつ切れ味が鋭いイメージで、朝井さんは中でも自分へのツッコミが強い。自意識が強くて、いつでも自分にツッコまずにはいられないその感じは、とても分かるなぁ~と頭を抱える。

 ツッコミ文化が発達した日本では、衣食住にとても気を遣っている人をどこか小馬鹿にするような風潮がある。何を隠そう衣食住に興味が薄い私にもそんなきらいがあった。今になって思うが、衣食住に興味がないなんて一体どれだけナルシストなのだろう。私は、ありのままの自分が最高に魅力的だと思っているのだろうか。衣食住に気を遣わないほうが断然恥ずかしいではないか。(255頁) 

  あ~分かる~…。というのも自分がまさに衣食住に関心がなく、でもそれを周りの人に言うと「私という素材そのもので勝負できます」みたいな風に捉えられるのではないかと思い、そんな風に思っているつもりはないのに、いやでも心のどこかではひょっとして思っているのか…?と自己嫌悪に陥るからだ。考えすぎかもしれない。

 

 一方で西さんのエッセイの面白さは先の二人とは少し違うように思う。西さんは朝井さんの言うところの「客観性とスター性を兼ね備えた魅力的な人物」なのではないか。西さんのエッセイは抜群に面白くて、でも物事を斜めから見たりするイメージはなく、西さん本人がシンプルにユニークで魅力的で、だから面白い人や楽しい人が集まってくる、という印象を受ける。西さんの視線は素直だなと、テレビで見てもそう思う。とにかく、お三方、三者三様でみんな好きだ。

 

 (anan発売が楽しみ~~~!!!!!)

レイシズム (講談社学術文庫)

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風と共にゆとりぬ (文春文庫)

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もものかんづめ (集英社文庫)

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この話、続けてもいいですか。 (ちくま文庫)

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  • 作者:西 加奈子
  • 発売日: 2011/11/09
  • メディア: 文庫