読んだもの見たもの聴いたもの

本やアイドルが主成分

2020年4月某日その3 白の闇/アイドルとSNS

この人達はさあ ファンに愛されてると思ってるのかなあ 

ライブ会場ってさ "欲しい"って熱気でぱんぱんなんだよね 

"なんかくれ" "俺にくれ"ってさ それって愛?

 

それだって愛でしょ 森依曰く「あげるものがあるうちは」

 

やっぱり人間じゃねーな

 

                      『恋愛的瞬間』吉野朔実

 

 4月が終わる~…。週に何回も飲みに行き、休日は日帰りあるいはお泊りで旅行、もしくはライブ鑑賞が主だった生活は一変し、月に一度も外で誰かと会うことはなかった代わりに、仕事は日に日に忙しさが増していく一方の、そんな4月だった。5月はもっと忙しいぞ~と分かっているので、体調を崩さないように気を付けるのみである。

 外出自粛中も楽しく過ごすぞ!と思いながらも、案外読書もアイドル鑑賞も捗らず、やっぱり時間があまりない中で何とか捻出した時間で趣味に没頭するのが良くて、休日にフリーな時間がど~ん!とあると、案外何もしない、ということがよく分かった。これは4月の反省で、必要以上にぼ~~~っ……としていた気がする。もっと本をたくさん読みたかった、読む時間はあった。5月も外出自粛は続きそうなので、コロナ明けに後悔しない過ごし方がしたい。

 と思いながら今読んでいるのはジョゼ・サラマーゴ『白の闇』である。コロナに罹った時の症状として"味覚、嗅覚がなくなる"というのが一つ挙げられていると思うが、ある日突然そんなことになるのは怖すぎるな…なんかそういう話、聞き覚えがあるな…と思い、積読本から取り出したのが『白の闇』。ある日突然視覚を失い、目の前が真っ白になるパンデミックの話である。まだ読んでいるところは序盤なのだが、もう怖い。もちろん病自体も怖いが、有事が起こった時の人間が怖い。これはコロナに関することでも、私が一番思うことであり、興味があることだ。それにしても翻訳の具合なのかどうかは分からないが、本作は地の文と会話文が区別されていないからか、ものすごい勢いで文章が押し寄せてきて楽しい。サラマーゴは初読なので、これがサラマーゴ節なのかどうかがよく分からないが。

 

 最近はアイドルももっぱらリモートワークという感じで、Snow Manもそれぞれビデオ通話を用いて企画をしている。最新版は最年少ラウールちゃん溺愛企画で平和な気持ちになること間違いなしなので、ぜひ見てほしい。


Snow Man「クイズ!正解はラウール」メンバー愛に溺れる!

 初めてSnow ManがリモートYouTubeをアップした時(2020年4月13日アップ)、実は動画を見る前にすごく躊躇った。推しの向井康二くんが自宅で動画を撮っている。YouTubeを見ると康二くんの自宅の壁を見ることができてしまう。好きだから見たいと言えば見たいけど、アイドルのリアルな部分を見るのは少し躊躇してしまう。だから自宅の壁も見たくない、という複雑な気持ちがあるからである。たかが壁ごときで何を…という感じなのだが…。ただもちろん彼らはプロであってリスク感覚も十分にある(と思っている)ので、自宅が特定されるようなものは何も映らないし、ただただ真っ白な壁が見えるのみである。スタッフがテロップを入れたりカットしたりと、完全に"編集を加えている"というのが分かる作りなのも良い。コンテンツとして実際にロケをして撮っていたYouTubeと比較して、クオリティにびっくりするほどの大差はない。という諸々で腑に落ちた今は、有難く視聴している。

 

 ただ最近はISLAND TVやYouTubeTwitterやインスタグラム、Weiboなどジャニーズによるネットへの進出が著しくて、それはそれで大変だなぁと思う。時代の流れ上今後はもっと加速していくのではないかと思うが、そうなるとアイドル本人のネットリテラシーSNSの利用スキルなども求められるようになる。ただでさえ歌にダンスに、お芝居、バラエティーと求められるスキルが多いのに、ここにきてネット巧者が勝つ時代が来るかもしれない。週刊文春WOMAN2020春号で香取慎吾ちゃんが、

日本の芸能界にいる限り、SNSをする上でも、役を演じるように、ある程度は自分自身を演じるべき、イメージは自分で守るべき、というのが僕の考えです。 

 とインタビューで答えていたのだが、まさにこの感覚があるかないか次第で、SNS利用は良いようにも悪いようにも転ぶだろう。慎吾ちゃんや剛くん、吾郎ちゃんはジャニーズ事務所を退所した後に初めてSNSを開始したが、これが全くと言っていいほどキャラブレしておらず、良い意味で雲の上の存在のままだ。

 

 私にとってアイドルのSNSはこれが理想。ファンとの絶妙で適切な距離感を保つ、という感覚に優れていて、聡い。このスキルが欲しい。だけど今の年若いジュニアに、では慎吾ちゃんを見習って、同じ感覚で!と言っても、経験値から何から違うのでさすがにスパルタな気もする(が、もちろん今もうすでにとても自覚的な人もいるだろう)。その一方でアイドルから質問を募集されたりハッシュタグをつけてTwitterに投稿するよう呼びかけられたりするファンにも自制心が求められるが、これもそのファンの精神的な成熟度に拠るところがある。なのでアイドルも常識的なファンも、誰も傷つくことが無いように事務所の大人が上手く捌いてくれることを願う。

 

 ただこういった私の感覚も、私自身が雲の上のアイドルが大好きなタイプのオタクだからであって、精神的近距離交流を好むタイプのオタクと比較してどちらが正解/不正解というのは、たぶんない。あまりに神格化して自分の頭の中で偶像を作り上げすぎてしまって、そこから少しでも逸れてしまうと気に入らない、というのも怖いので、いくら雲の上にいてほしいと思っていても、そこは気を付けなくてはいけないな、という自戒もある。その一方で私にも、大好きなアイドルのことを知りたい、近づきたいと思う気持ちが一ミリも理解できないというわけではない。

「万華鏡を分解して、中身にガッカリした、みたいなことをいうな」

 

「万華鏡はただ喜んで回すんだ、それでみえていたことだけが本当のことだよ」

 

                       『愛のようだ』長嶋有

 ただ私は、アイドルが自らファンへ開示しようと思うものだけを享受して、それを必要以上に子細に検分せず、ただかっこいいな、可愛いなと喜んでいたいだけだ。それだけが本当のことだ。これが私のオタクライフハックなのだと思う。

 

恋愛的瞬間〔文庫版〕(1) (小学館文庫)

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白の闇 (河出文庫)

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愛のようだ (中公文庫)

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  • 作者:長嶋 有
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫