読んだもの見たもの聴いたもの

本やアイドルが主成分

『子どものことを子どもにきく』杉山亮

ある日、先生の教科書にはみんなのとちがって最初から赤い字で答えが印刷してあるのを発見した隆。けっこうびっくりして以後先生を尊敬していない。—168頁

 東京都の公立保育園の第一号男性保育者として保育園、幼稚園で勤務したあと、おもちゃ作家へ転身し、児童書などを執筆している著者が、3歳から10歳までの息子に対して年に1回行ったインタビューを収録した本。

自我も芽生えていない頃からどんどんと社会性を身に付け、コミュニケーションスキルが発達していく様子が、受け答えから分かるのが面白い。一方で、4歳の息子の隆さんと二回り年の違う自分とでさして何も変わらない部分もあって、「飛行機はどうやって作るのか」という問いに対してジュースの缶を集めてコマ回しの紐で縛ってくっつけて~と考えている隆さんと、今の私の飛行機の作り方に対する解像度とでは、そんなに変わらない。ただ変わったのは、著者も書いていた通り、大人の私はそれを知らなくても別に困らないと分かったがゆえに考えることを止めた、という一点だと思う。そう考えると少し切ないな。

あと、こういう自分も知らないことを子どもに聞かれた時に、どうやって答えたらいいんだろうなとも思った。飛行機の作り方を聞かれたらどうするか。自分は分からないと正直に答えると思うんだけど、果たしてその答えを探すために子どもの前でスマホで調べるか。できればスマホで調べれば大雑把な情報はたいていすぐに手に入るということは、辞書や本などで調べるという方法を身に付けた後に、補完的な方法として知ってほしい気がするのだけど、それをアシストするだけの時間的、精神的余裕が自分にあるのか。世の親御さんたちはどうしているんだろう。

 

 …などと、子育てをする予定がないにもかかわらず、自分が子とどう関わるかについて考えるのが結構好きなのは、子どもが好きだからだと思う。だけどこの好きというのが、現時点では、言語を獲得する経緯を見たいとか、2.5等身くらいで大人ほどの筋力もないのにあんなに歩けてすごいとか、発言も行動も予見可能性が低くて面白いとか、知的好奇心をくすぐる観察対象として興味がある、みたいな感情にどうも近い気がしていて、子どものいる友人にはこんなことは言わないようにしている。

そしてこういう観察しようという気満々の気持ちは、子どもにも伝わるものだろうなと、本書を読んで思った。同時に、子どもからも大人はよくよく観察されているのだな。それを思うと、子育てとはなんて恐ろしいことなんだろう、自分は観察されて真似されるに値しないので反面教師的な存在になるのだろうか、それも怖いなと思った。子どもはすごく可愛いと思うし、自分の人生経験として子育てをしてみたい気もするけど、自分の人生経験のために付き合わせるのも申し訳ないな、というかそもそもみんなの「子どもがほしい」という気持ちを因数分解するとそれは何なんだろうな、因数分解とか訳の分からないことを言い出す理性を超えた本能なのかな、何も分からんけどすごく興味があるな…知りたいけど人には聞きづらい。