読んだもの見たもの聴いたもの

本やアイドルが主成分

最近読んだ本①

 最近は平日終電帰りからの休日気絶睡眠で持ちこたえているような日々なのだけど、どれだけしんどいな~と思っていても寝つきは良いし割と元気にやっている。

 

 こないだ行ったハロプロ勢揃いのライブイベント「ひなフェス」で、センターステージの目の前最前列の席が当たって吐きそうになった。人生最良の席。しかもその席を大好きな前田こころちゃんが所属するBEYOOOOONDSプレミアム回で引き当ててしまい、一生分の運を使い果たした可能性がある。そのライブでBEYOOOOONDSが『Now Now Ningen』という曲を歌っていたのだけど、目の前にいた前田こころちゃんが「大丈夫 頑張ろうね」の歌詞のところで私を見て私に向かって手のひらを差し出してる!!!!!!!!!!!と思った瞬間に大号泣してマスクがびちゃびちゃになった。きっと私の隣の人も後ろの人もみんな同じことを感じていただろうけど、この勘違いシーンを反芻し続けることでこの先一生やっていけちゃうから、こころちゃんはスゴイ。


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サムネイル一番右の、ショートカットで高身長でパンツ姿の女の子が前田こころちゃん。

 

 映画「おそ松さん」もすごかった。実写化が決まった時、恥ずかしながら原作の「おそ松さん」のことを何も知らず、赤塚不二夫の「おそ松くん」?シェーのやつ?くらいに思っていたらツイッターが結構ざわついていたから、これは大変そうな案件だ…と正直不安だった。でもやっぱりSnow Manは見たいし…と思いながら見に行ったのだけど、見終わった今、もう一回見たい。

 とにかくメタフィクションだった。無謀な実写化であること、六つ子役なのに全く顔が似ていないけどお揃いの格好、髪形をしていればもうそれは六つ子なのだ、そういう"設定"なのだということこそが物語の肝になっているし、登場人物たちもそれを自覚している。さらに邦画あるあるとも言えるようなベタな演出、ベタな劇中歌をこれでもかと盛り込みまくり、大ヒット邦画のパロディみたいなものも入っていて、いろんな種類のメタがそこかしこに散りばめられていた。突然流れる名もなき劇中歌の妙なRADWIMPSっぽさがうさん臭くて良かった。予告で見た「物語終わらせ師」たちがあんなメタを背負って大活躍するとは思っていなかった。

 良い意味で思っていた映画と違ってすごく楽しかった。筒井康隆の『虚人たち』を10,000倍バカバカしくしたみたいなメタフィクションで満足。あと、開店前のパチンコに並ぶSnow Manも見られる。

 

 以下、最近読んだ本。

 

『「帝国」ロシアの地政学』小泉悠

 ロシアの大義名分である「ウクライナ政府から虐げられてきたウクライナ東部の親ロシア派住民の保護」とは何なのか、なぜウクライナNATOに加盟することがそんなに嫌なのか、何も分かっていなかったので本書を読んだら、とても分かりやすく書いてあった。古くは第二次世界大戦の勝利、それはすなわちナチズムに対する勝利であり、その自負を共有するロシア民族がソ連の崩壊によりロシアの領域外にも存在することになった。そうして分断されたロシア系住民はロシア人にとって「ほとんど我々」であり、「ほとんど我々」が住む旧ソ連国は今もロシアの「勢力圏」である、という国家観があるらしい。確かにその国家観に基づけばプーチン大統領の言う大義名分も、意味だけは何となく分かる。この本を読む前と後ではニュースの解像度が変わった気がするから、入門書としてとても良かった。

 

『現代ロシアの軍事戦略』小泉悠

 空から、あるいは現地で兵器をもって戦う従来の戦い方に加えて、発達したサイバー空間などを利用したプロパガンダの流布や情報戦など、人々の心理に訴える「非線形戦争」が合わさったハイブリッドな戦い方が、現代ロシアの軍事戦略である、という本。

 今、戦地でのリアルな映像がどの場所にいても簡単に見られたり、捕虜の顔がアップで撮られた映像が全世界中に流れたりしているけど、その映像はほぼ未来永劫完全に消えることはないだろうなと思うと、昔にはなかった新しい侵攻だなと思う。また昔と違って、国境を超えた人の移動がこれだけ盛んに行われているうえに、インターネット利用者が増えて世界中の情報にアクセスできる状況だと、いくら情報統制をしたところで完璧に統制しきることは難しいのではないか。そうすると侵攻している国が自国の兵士ならびに国民の戦争への士気を高めるのは、昔よりも難しくなっているのではないか、と思ったりした。想像だけど。

 

『ロシアは今日も荒れ模様』米原万里

 少女時代の5年間を在プラハソビエト学校で過ごし、その後ロシア語の通訳者として活躍した著者の、ロシア人との交流を描いたエッセイ。来る日も来る日もウォッカを飲み続けるロシア人たちの生活、家庭、仕事などを通してロシア社会が見えてくる、すごく面白い本だった。

なかでも、

ソビエト体制とは、

「失業者はいないが誰も働かない。誰も働かないが皆が給料を貰う。皆が給料を貰うが、何も買うものがない。何も買うものがないが、何とか食っていける。何とか食っていけるが、皆が不満を持つ。皆が不満を持つが、全員が『賛成』と投票する」(名越健郎編訳『独裁者たちへ‼』)

といみじくも小咄が指摘するような実態のものだった。—58頁

というところがとても印象に残っている。資本主義も国全体の成長が鈍化すると綻びが目立ってくるのかな…とぼんやり思うことがあるけど、社会主義もそれはそれで難しいところがあるな…と思う。何だったら良いのか分からない。

 

中国共産党、その百年』石川禎浩

 今、ロシアの動向と、それに対するアメリカを筆頭とした西側諸国の対応をよくよく見ているのが中国なのだと思うけど、自分が中国政治について何も知らなかったので読んだ。

 今でいうロシアのコミンテルンからの過干渉やスターリンに振り回され、蒋介石率いる国民政府と戦い、紆余曲折を経て一党トップとなった毛沢東率いる共産党が、いかにして今の習近平政権まで繋がったか、という時代史になっていて、あまりの大動乱に読む手が止まらなかった。毛沢東の党上層部への指導法の一つとして自らの失態などを自白する「反省筆記」の提出があり、それを踏まえて批判集会が催される、という話などを読むとオーウェルの『一九八四年』を思い出さずにはいられない。こうしてトップへの忠誠心を高め、権力を集中させていくのだなと思った。

 

アメリカ世界秩序の終焉』アミタフ・アチャリア

 今後人口も増えて右肩上がりに力をつけていくのは中国やインド、南アフリカや東南アジアなどであり、西側諸国ではない。そうしたなかで、第二次世界大戦後の世界でのアメリカの圧倒的覇権を意味する「米国主導のリベラル覇権秩序」が、この先もそのままのパワーを維持することは難しい。今後は多元化した世界で、一つのイデオロギーや政治システムが普遍化されるのではなく、異なったイデオロギーが共存するマルチプレックスな世界になる。そこでは、これまでアメリカを始めとする西側諸国が持っていた特権の一部をそれ以外の新興国にも共有し、尊重する必要がある…ということを主張する本。原著は2018年に出版されているけど、「世界の警察官」不在の世界で権威主義国家が大暴れすることを民主主義国家が止められなかった今、よりリアルに感じられる内容だった。

 

 続けて数冊本を読む中で、中国にしてもロシアにしても、歴史の中で西側諸国に辛酸を嘗めさせられてきたという思いがあって、そこからのゲームチェンジをいつだって夢見ており、中国に関してはそれが夢物語では終わらないかもしれないと思えるほどの経済力などを身に付けてきている一方で、それと並行して西側諸国が停滞してきているのが今なんだなということは分かった。