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錦戸亮ちゃんに演じてほしい小説の登場人物5選

 錦戸亮ちゃんが関ジャニ∞をやめてから約半月が経った。短かったのか長かったのかはよく分からないが、それでもまだ寂しいということには変わりない。また、ジャニ勉、関ジャニクロニクル、関ジャムと、1週間に1~3回は定期的に見られていた姿が今はもう見られない、ということが辛い。大好きな錦戸亮ちゃんの顔が見たい。今後錦戸亮ちゃんが挑戦する世界は芝居なのか音楽なのか、それも分からないが、私は映画に出てほしいな!ということで、個人的に錦戸亮ちゃんに実写化してほしいと思う登場人物を考えた。ただし私が好きな本にはかっこいい人、憧れの人、いわゆるヒーローは出てこないので、共感が得られるとは一つも思っていない。が、こういう錦戸亮ちゃんが見たい!

 

1.川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』のニシノユキヒコ

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

 

  竹野内豊さんに先越されてしまったが、錦戸亮ちゃんバージョンも見たい。清潔で所作も滑らかでそれでいて悪気のない女たらしで、ただ決して自分だけのものにはならないニシノさん=錦戸亮ちゃん、好きになるに決まっている。

恋とは何だろうか。人は人を恋する権利を持つが、人は人に恋される権利は持たない。

 って、骨の髄まで錦戸亮ちゃんを好きになって錦戸亮ちゃんに選ばれないことに絶望したい。

 そして、とにかく女に優しいニシノがその一方でどこか冷ややかで暗い部分をもつ面が垣間見えた瞬間に、彼がひどく寂しく見えるのが怖い。こうして、これ以上愛してはいけないと感じた女たちは彼から離れていく。最終的にはニシノこそが誰からも選ばれないところがこの小説の妙。優しくてチャーミングで色気があって絶対的に孤独なニシノを錦戸亮ちゃんに演じてもらいたい。

 

 

2.井上荒野『結婚』の古海健児

結婚 (角川文庫)

結婚 (角川文庫)

 

  これもディーン・フジオカさんに先越されてしまったが(2回目)、結婚詐欺師の錦戸亮ちゃんは絶対に見たい。

 結婚詐欺師の男、騙される女たち、その近辺にいる男女たちが順に語り手となって話が進む。スマートで母性本能をくすぐるのが上手で何せ女を喜ばせるのが上手い男の、ちょっとした人間臭さや至らなさ。そうしたところが彼の計算外のタイミングでふと漏れる瞬間。その瞬間に、それまでいくらかはあったかもしれない半信半疑の気持ちに目を瞑ってしまうようになる女の心情は、とてもよく分かる。また、自分が騙されたという事実を認めること、それを他人に知られることで自尊心が傷つけられるのが怖い気持ちが、もはや必死に彼へとのめり込ませるのだと思う。

 いくら騙すことに成功したとしても満たされない、もはや自分が本当は何を欲しているのかも実は分かっていないのでは?と思わせる古海の心の空虚さに悲しくなる。錦戸亮ちゃんは喜怒哀楽でいうところの"哀"が上手い役者だと思っているので、この役を演じてほしい。

 

3.ジュノ・ディアス『こうしてお前は彼女にフラれる』のユニオール

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)

こうしてお前は彼女にフラれる (新潮クレスト・ブックス)

 
オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

 

 『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(これも傑作)の主人公の友達であるユニオールを主役とした連作短編集。このユニオール、とにかく浮気を繰り返しては彼女にバレてフラれるのだ。どうしてかいつも上手くいかない。それはなぜか。ユニオールの一見軽薄な立ち居振舞いの中に、亡き兄への潜在的な憧れや愛への渇望、孤独感が垣間見えることが一因なのではないかと思う。関係が永遠に続くことを信じられず、相手に心を開ききれない。心を開いた相手との関係が終息してしまってまた孤独になるくらいなら、初めから深く付き合わない方が良い。ユニオールの中にそのような諦念が感じられるのが悲しくて、憎めない。

 国民的末っ子でありプレイボーイ(のイメージ)な錦戸亮ちゃんに、ぜひともユニオールを演じてほしい。

 

4.谷崎潤一郎春琴抄』の佐助

春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

 

 ※ネタバレを含みます。芸事の達人であり盲目の春琴に奉公する丁稚の佐助。献身的な奉仕には春琴に対する恋心も含まれていて、春琴はそんな佐助の気持ちに恐らく気づいているうえで、数々の無理難題をふっかける。無茶な我儘に罵倒、暴力、何でもござれ。それでも何一つ屈せず言う事を聞き続ける佐助の奉公心を超えた、仕えることへの快楽に慄く。谷崎の小説にはこうして、人を支配下に置く快楽と、人に支配されることの快楽、その共依存的な関係性がよく出てくるように思う。

 そしてエスカレートする春琴の要求は、火傷して爛れた自分の顔を見られたくないので、佐助にも自分と同じように盲目になってほしい、ということだった。このシーンの緊迫感と官能を、自他共に認めるMっ気の強い錦戸亮ちゃんに是非、やってほしい。

 

5.フィリップ・バラン『趣味の問題』のニコラ

趣味の問題 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

趣味の問題 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 

  私の趣味が問題である気もするが、ニコラを錦戸亮ちゃんに演じてほしい。大企業の社長であるフレデリックの試食係として雇われることになったニコラ。試食係の名の通り、フレデリックが嫌いな食べ物を口にしてしまわないよう、何でも先に食してフレデリックに伝える仕事を通して信頼を得ていく。そのうちに試食対象は食べ物だけでなく、映画、本、果てには女まで拡大していく狂いっぷり。生活のありとあらゆるものを"試食"させなければ生きられない男と、その男のそばで"試食"しなければ生きられない男のむせ返るような濃密な関係。二人は恋愛関係ではないが恋愛以上の相手への執着心と依存心があり、どうしたって離れられないのだろう。この二人が迎えたラストにはゾッとしたようなほっとしたような、何とも言えない気持ちになって好みの読後感だった。

 なぜ私がニコラを錦戸亮ちゃんに演じてほしいかというと、上に書いたような"試食"を"させられる"錦戸亮ちゃん、はちゃめちゃにエロいな…と思ったからです、以上です。何かを強いられ、それを受け入れ、それがなければもはや生きられない錦戸亮ちゃんが見たい、以上です。

 

 こうしてみると、私は錦戸亮ちゃんに「女癖が悪い男」もしくは「ドMの男」をどうしても演じてほしいらしい。太宰治人間失格』の葉蔵ゲーテ『若きウェルテルの悩み』のウェルテル本谷有希子『ぬるい毒』の向伊もいいな…。

錦戸亮ちゃんの次なる仕事を、心から楽しみにしています。